これまで日常生活における歯の健康や、歯科医院の利用の仕方などを伝えてきました。しかし、近年の出来事を考えると、これまで以上に、日常が日常ではなくなることも考えなければならないように思われます。そこで、今回は、非常事態における歯の健康をお伝えします。

自然災害などで突然ライフラインが途絶えたり、避難所生活を余儀なくされたときを考えてください。おそらく、初めは自身の命を守ること、家族や身近な人を心配すること、最低限の生活を考えることで頭はいっぱいになるでしょう。自身も被災者でありながら、困っている人のために何かしようとボランティアを考えるかもしれません。

そこに、これまで毎日のようにやってきお口のケアのことは入っているでしょうか。

確かに、1日2日、歯磨きをしなかったからといって必ずむし歯になるわけではありません。入れ歯のケアをしなかったからといって、不具合につながるとも限りません。したがって、しばらく歯のケアが疎かになったとしても、それほど問題ないように見えるかもしれません。

しかし、お口のケアをすることは、全身の健康にもつながっていることを忘れてはいけません。

緊急時、ケアが疎かになったお口の中では細菌がいつも以上に増殖しやすい環境になります。むし歯や歯周病の危険が高まるのはもちろんのこと、増殖した細菌により肺炎や脳梗塞、感染症などが引き起こされる可能性もあるのです。実際、震災などで避難生活を余儀なくされた人で、肺炎にかかった人も相当数いて、お口のケアとの関連性が否定できないとされています。

以上を踏まえて、防災グッズに歯ブラシを入れておくのがおすすめです。さらに、断水の可能性を考えると、歯ブラシを持っていてもいつものようなケアができない可能性もあります。ガーゼなどがあると、水がなくても指に巻き付けてお口のケアができます。

そして、やはりポイントとなるのは日ごろのお口のケア。定期的に歯科検診を受け、お口の不具合を放置せず、入れ歯などの義歯のメンテナンスもこまめにしておくことが、緊急時のお口や全身の健康を守ることにつながります。