「むし歯にはなりたくない」

多くの方に共通する思いではないでしょうか。

習慣として、口臭予防としてなど、さまざまな理由があると思いますが、歯磨きをする大きな理由の一つが、むし歯予防だと思います。さて、日ごろから歯磨きを念入りにしているのに、自覚もないのに「むし歯です」と言われたらどうでしょう。

学校などで行われる集団歯科検診では、特に自覚もなく、これまで一度もむし歯にかかったことがない人でも、「4本むし歯です」などチェックされるという事態が起きています。そして、このようにチェックされた人たちが、びっくりして歯科医院に行くと「むし歯は1本もなかった」ということも起きています。

これは、担当の医師が間違った結果なのでしょうか。それとも受診先の歯科医院が間違っているのでしょうか。

このような事態が起きてしまうのは、集団歯科検診におけるチェック基準に原因があります。専門知識を有さない私たちは、集団歯科検診の基準は歯科医院などで行われている歯科検診と同等と思い込んでいます。しかし、これこそが間違いで、それに気づくには集団歯科検診の意味を知らなければなりません。

ポイントは、集団歯科検診はスクリーニングテスト（ふるいわけ検査）であるという点。むし歯である可能性があれば、「要精見」と判断されるのです。

集団歯科検診のむし歯について、「要精見」と判断されやすい理由に、目視や簡単な歯科器具のみでの診断となることがあげられます。むし歯は表面に大きく穴が空き、明らかにむし歯と分かるものから、表面上はほとんど所見がなくても内部に大きく広がっているものまでさまざまです。

心配されるのは、集団歯科検診で「むし歯なし」と判断してしまい、むし歯が進行するまで本人が気づかずにいること。この場合、「むし歯あり」と判断していれば、当人が歯科医院を受診し、早い段階で治療できた可能性があります。

以上を踏まえると、集団歯科検診ではむし歯かもしれないし、むし歯じゃないかもしれないものは、「むし歯あり（要精見）」と判断した方が、本人のためになると考えることができるのです。もし要精見とチェックされたら、そのまま放置は危険です。初期のむし歯であれば治ることもありますので、早めに歯科医院を受診してください。